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医療トラブル患者の期待権

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医療トラブル「患者の期待権」

患者が病院に罹った際、こんな治療をして欲しいなど、医師に期待することがありますよね。

医療トラブル治療を選択する権利に似ていますが、この「期待権」というのは、医療の世界で認められるのでしょうか。

判例は、大阪地判、平成元年6・26

個人の患者が、病院に1500万円の慰謝料を求めた事件です。

事例は、頸椎の椎弓切除手術に先立って、医師がミエログラフィ―を実施しなかったことについて、患者の期待を裏切ったという主張だったのです。

ミエログラフィ―とは、脊髄の中を見る造影検査の事です。

患者は、右下肢に軽度の歩行障害をもっていました。

当該病院を受診したところ、その原因は頸椎にあると診断され、早期の手術を勧められました。

この手術は危険を伴うものですし、万一ミスをしたら重大な後遺障害が残ることも予想されるものですので、当該手術の基本的な診断法であるミエログラフィ―の実施は必要不可欠とされているものでした。

ところが、当該医師は、それをせずに手術を実施し、患者の状態が悪化したという結果になってしまいました。

ただし、ミエログラフィ―の省略によって症状が悪化したのかは、医学上も証拠の上でも言い得ないものでした。

さて、裁判所はどういう判断をしたのでしょうか・・・

裁判所は、患者の「期待権」を認めました。

「期待権」と聞くと何かフワッとした感じで、裁判などお堅い場で通用するの?と思われるかもしれませんが、期待権について詳細に論じていますので以下、裁判所の判断を記載します。

「症状悪化の原因がミエログラフィ―省略にあると医学上、証拠上言い得ないとしても、期待に反した手術を施された患者としては、もしミエログラフィ―を試みてもらっていれば・・・省略・・・現在の様な後遺症に苦しむことはなかったかもしれないと考えるだろうし、それは無理からぬところである。」

もし●●していてくれれば・・・と患者が考えるのは無理もないと言っているのですね。

そして続けて、

「患者は、過去、現在、未来にわたり、この様な可能性の芽を摘まれ、それが今更どうしようもないことに対する憤り、無念さ、悲しさにかられ、あるいはそれらの為に不治の後遺障害をもまた天命、運命であったものとしてこれを受け入れる境涯には至りにくく、それらの分だけ余分に後遺障害に伴う精神的苦痛に耐えていかなければならなくなった。患者が受けるこれらの精神的苦痛は、察するに余りあるところである。」と判示しています。

因みに、期待権侵害について200万円の慰謝料を認容しました。

医療トラブルで、期待を裏切られたという悩みは少なからずあると思いますが、この様な判例もあり、実務の参考にしたいですね。

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