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親告罪の告訴

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親告罪の意義

親告罪とは、告訴権者による告訴が訴訟遂行上の要件となっている罪をいいます。例えば、強姦罪・過失傷害罪・著作権法違反の罪がこれにあたります。このような親告罪が設けられている理由については、犯罪の性質上、被害者の名誉を尊重するため、あるいは比較的軽微な犯罪について被害者の意思を考慮するためとされています。

親告罪には2種類あって、このうち通常の親告罪のことを『絶対的親告罪』と言います。絶対的親告罪については、犯罪事実を指示して告訴するだけで足り、犯人の特定まで指示する必要はありません。これに対して、『相対的親告罪』は、その身分関係ある犯人に対する関係(例えば親族間の窃盗・詐欺・横領のように犯人が被害者と一定の身分関係あるため)で親告罪とされているものを指します。このため、相対的親告罪については、その身分関係のある犯人を特に指示する告訴でなければ、告訴の効力が認められていません。

通常の親告罪の告訴が捜査のスタートに過ぎないのに対して、親告罪の告訴は、訴訟条件となっていることから、検察官は親告罪については有効な告訴がなければ公訴提起することができないとなっています。親告罪であることが起訴時点で判明しているのに有効な告訴を欠いたまま事件を起訴すると、その起訴は無効なものとなり、公訴棄却の判決が下されてしまいます(刑事訴訟法338条)。

親族間の犯罪に関する特例が適用(準用)される犯罪

配偶者、直系血族又は同居の親族以外のその他の親族が、窃盗罪及び不動産侵奪罪(これらの未遂罪)を犯した場合には、刑法第244条によって『告訴がなければ公訴を提起することができない』こととなっています。この規定は、詐欺罪・背任罪・準詐欺罪・恐喝罪及びその未遂罪について準用されています。さらには、単純横領罪・業務上横領罪・遺失物横領罪についても同様となっています。

告訴期間

一般の親告罪の告訴については、何ら期間の制限はありません。ところが、これに対して、親告罪については、告訴が訴訟条件となる関係上、告訴期間に制限が設けられていて、原則として『犯人を知った日から6カ月を経過したとき』には告訴することができなくなります(一部例外あり)。この『犯人を知った日』とは、告訴権者が誰が犯人であるかを知ったの日のことを意味していて、その当日が告訴機関の起算点となります。

被害者である告訴権者が数人いるときは、各自が犯人を知った日がそれぞれの告訴権行使の起算日になります。また、被害者と法定代理人とで犯人を知った日が異なる場合、それぞれについて起算日が異なることになります。

告訴の取消

刑事訴訟法では、親告罪についての告訴は、『公訴の提起があるまで、これを取り消すことができる』と規定していて、一旦行われた告訴を取り消すことを認めています。ただ、『告訴の取り消しをしたものは、さらに告訴をすることができない』とも規定していて、取り消し後の再告訴について禁止しています。

告訴は、犯罪事実について行われるものですから、複数の犯人がいる場合に、その内の特定の者についてだけ取り消すと言う事はできないとされています。

公訴の提起までとは、起訴状が裁判所に到達するまでのことをいいます。告訴は犯罪事実について効力を生じるものであり、その事実が起訴されている以上、共犯者の中の誰が起訴されているかを問わず、未だ起訴されていない他の共犯者に対する告訴を取り消すことができません。

告訴の取消権者

告訴をした者は、その告訴を取り消すことができます。もし、その者が告訴後に死亡すれば取り消し権者はいなくなることになってしまいます。この場合、相続人が取り消すことができないです。また、告訴をした者が数人いるときは、他の告訴権者が行った告訴を取り消すことができないし、本人の告訴を法定代理人が取り消すこともできません。

告訴権の放棄

告訴権者が告訴前に告訴権を放棄することは認められていません。例えば、強姦罪の被害者が調査官に対して『告訴をしない』と申し立て告訴権の放棄の意思を明示したとしても、その者の告訴権が消滅するものではありません。被害者が犯人と示談をして、犯人に対し告訴権不行使の意思を表示したとしても、その告訴を失うものでもありません。後日、その被害者の気が変わって告訴が行われた場合、その告訴は有効な告訴となります。ただし、この場合、告訴期間の制限の適用がある犯罪については、期間の経過の有無について注意する必要があります。一旦告訴した後における告訴権の放棄は、告訴の取り消しに他ならず刑事訴訟法によって認められている行為です。

 

 

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