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不可抗力による出来事

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質問
震災の影響で、これまで毎月返していた借金の返済が出来なくなってしまいました。しばらく仕事も出来そうもないですし震災は不可抗力ですので、借金を無しにしてもらう事は出来ないのでしょうか?

回答
これは本当に悩ましい事ですよね。銀行の抵当権付きの住宅ローンやその他クレジット等は「金銭消費貸借契約」と言われるものです。
まず、大前提に、金銭債務ですので、震災などの不可抗力を理由に支払いを拒否する事は出来ません。更には、担保物件が滅失してしまった場合、ローンを一括返済しなければいけない事態に陥ることも御座います。
東日本の大震災後一定の措置はとられているものの非常に厳しい状況に変わりはないですよね。
そこで、国が用意している制度としては、大きく3つ御座います。

■特定調停手続
■再生手続
■破産手続

特定調停は、債務者とお金を返さなければいけいない債権者との当事者間のみで話し合いがもたれるというものです。話し合いで今後の返済計画を話し合い、円満かつ柔軟に対応出来る利点が御座います。
一方、当事者間のみで有効なので、他に債権者もいた場合、文句言われる可能性は御座います。

それに対し、再生手続は、裁判所が入って認可するものですので、全債権者に対し有効な前向きな手続きで生活し働きながら返済をしていくものです。
最後、破産手続は、その名の通り、債務者の持っている財産を金銭に変えて債権者に分配し借金を無しにするものです。

事業主向けの救済制度などはあるのに、個人のお金の問題になると、途端に冷たいと感じる制度しかないのが現実ですね。

震災後、身の回りの事などは皆で協力しあえますが、お金の事となると各家庭で抱え込んでしまう事もあるかと思います。

火災保険が使えそうですが、地震は免責されており、地震保険を付けていれば、火災保険の半額までは補償をつけることも出来ますので、このあたりの見直しもしておくと良いですね。

質問
被災者です。震災後数ヶ月経ち、ようやく元の生活を取り戻そうとしている矢先に知らない業者から買ってもいない商品が届きました。振込先とキャンセルが出来る旨記載されているのですが、住所や連絡先の記載が無く、気持ち悪いので返品したいです。どうしたら良いでしょうか?返品先が判明しない場合、14日経てば処分していいという決まりもあったかと思いますが、如何でしょうか。

回答
震災後は、各種の悪質商法が横行する傾向にありますね。
いきなり、公的団体を装って、自宅を訪問し、義援金の拠出を求めてくるケースも有るようです。そもそも、公的団体は、戸別訪問で募金活動はしないので、これは拒絶するべきですね。

ご質問のケースは、「送りつけ商法」や「ネガティブオプション商法」などと言われるものです。
購入の申し込みをしていない者に一方的に商品を送りつけて、返送または購入しない旨の通知を行わない場合に購入の意思ありとみなし代金を請求する商法を言います。一定期間内に返送しなければ売買契約は成立したものとみなすとの注意書きも記載しておきながら、返品先を不透明にしているケースが散見されます。
この場合、送りつけられた商品は、業者の所有物ですので、勝手に処分をしてはいけないのではないかという心理も働き、実際、特定商取引法では14日間保管しなければいけないという規定が御座いました。
しかし、特に嵩張るものなど14日間も自宅に保管するのは嫌ですし、何故一方的に送りつけられたのに気を遣わなければならないのか疑問ですよね。

この規定は令和3年に改定され、今は、売買契約に基づかないで送りつけられたケースの場合、直ちに処分を行う事が出来るようになりました。

それと震災後は、振り込め詐欺も増えるのですが、震災時に一刻を争うほど緊急に大金が必要になることはほとんどないですので、自分だけで判断せず、本人確認を徹底し、周りに相談しながら冷静に対処する事が重要ですね。

震災など不可抗力の混乱に紛れて犯罪も横行しますので、注意しましょう。

■質問

震災に伴い、従業員への給与の支払いが遅れそうです。
銀行の営業機能が停止している場合でも他の銀行へ振り替える等対策をしていないと労基法違反になってしまうのでしょうか?

■回答

労働基準法第24条は、「賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定しています。
これが原則であり、違反すると罰則(30万円以下の罰金)も御座います。

しかし、これは原則であって、震災の様に会社の故意過失が関係ない場合は、労基法違反にはなりません。

ただし、

以前ご紹介した様に、金銭債務は、不可抗力でも抗弁できませんでしたよね。

よって、支払い義務は当然に残って、尚且つ遅延損害金も発生する事になります。

■質問

震災を理由に内定取り消しは出来ますか?内定取り消しは出来なくても入社日は変更しても問題ないですよね。

■回答

まず、採用は「契約」であるという事を前提に考えるべきですね。

企業の採用内定と言いますのは、法律上、解約権留保付きの労働契約と解されています。

よって一旦契約したものを取り消すには、解雇の場合と同様に、「客観的に合理的と認められ且つ社会通念上相当として是認される」場合と考えられます。

解雇の4要件と言われるものですね。

1 人員を削減する必要性がある
2 人選の方法に合理性がある
3 回避する努力をし他に選択肢が無い
4 差別的取り扱いが無い

よって、震災のみを理由にするのは厳しそうですね。

因みに内定取り消しに合理性が有る場合、解雇予告通知は必要ないと解されていますが、ハローワークや出身学校へ事前に通知することは必要です。

入社日の変更も、「契約」と考えると契約の開始日を変えるわけですから、一方的に変更することは当然出来ず、内定者の合意を得る必要があります。

雇用となると契約である事を忘れがちですので、注意しましょう。

医療もそうですね。診療を受けることは準委任契約という契約なのですが、それを忘れ、一方的に説明を拒否されたり、診療を打ち切られたりするケースも散見されます。

■質問

何か特別に理由があるわけではなかったのですが、お互い冷めきっており、夫と離婚をしようと協議をしている最中に震災に見舞われ、夫が行方不明となりました。この場合、どうすれば良いのでしょうか?

■回答

これは、相手がいないので、協議や調停が出来ない状態ですよね。
この場合は、家庭裁判所で離婚訴訟を提起する事になります。
離婚するには理由が必要で、民法770条では以下、5つを列挙しております。

1.悪意の遺棄
2.不貞行為
3.強度の精神病で回復の見込み無し
4.生死が3年以上不明
5.その他婚姻を継続し難い事由

今回の離婚は特別に理由があるわけではないという事ですので、「生死が3年以上不明」という条件を満たすまで待つしかなさそうと考えられますね。

しかし、3年も待てないという事情がある場合もあり、その際は「失踪宣告」という制度を利用することも出来ます。

震災などの危難が去ったあと、1年を超えて生死が不明な場合、失踪宣告の手続きを取ると夫は死亡したものとみなされるので、婚姻状態は解消され再婚する事ができるようになります。

ところが、これには落とし穴もあり、後に夫が生きていた事が明らかとなるケースがあれば、前婚と再婚どっちが有効なのか争いが生じてしまうケースもあるのです。

何かドラマみたいな話しですが、婚姻関係の解消という点では離婚判決を得た方が確実ですね。

 

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