Y社の株式を持っており、この度、Y社が大幅に人員整理をしてAIを積極的に導入する発表があり、その影響で株価がぐんと上がりました。人員整理をすると株価が上がるなんて、正にAI時代ですかね。
そこでその株式を数千株売却しようとネット経由で指値で売り注文を出したのですが、入力を誤り、1900円と入力したつもりが1600円と入力してしまいました。取り消し処理も間に合わず即決済されてしまったのですが、この場合、錯誤で無効は主張出来ないのでしょうか?
そうですね。仰っている事は、民法95条「錯誤無効」の事かと思います。
今回の様に、表意者の意思表示が、本来意図していたところではなく、真意と表示上の効果意思が一致せず、本人がその事に気付かないままの場合は「錯誤」といい原則的には無効です。
これは比較的有名な条文ですので、皆様の意識の中でも「勘違いして気付かなかった場合は無効で済む」という考えがあろうかと思います。
一般の取引であれば、すぐに訂正して取り消せば良いですよね。
しかし、今回のようなネットトレードではそうもいきません。
ネットトレード:インターネットを通じて株式等の取引を行うこと
インターネットの普及でネットを利用した証券取引は飛躍的に増えており、特に平成26年にNISAという少額投資非課税制度が導入された事により個人投資家間で普及しました。
錯誤無効というのも何でも無効かというとその様な事はなく、表意者に「重大な過失」があるときまで保護はされません。
この「重大な過失」とはどういう場合をいうのかですが、特にネットトレードではこの言葉通りに解釈はされず、「わずかな注意」さえ払えば防げた様な場合、「重大な過失」ありと判断されてしまうのです。
ネットトレードの特徴として一旦入力した内容を確認する画面が表示され、それを確認した上で最終的に発注のクリックをするはずです。
誤入力をしてそのまま発注されてしまうわけではなく、自ら確認して確認後にクリックしていますので、それでも尚間違えたとなると「わずかな注意」が足りないと判断されてしまうのです。
また、証券取引市場というのは大量に処理することを常とした市場であり、一部の人のミスにカマってなどいられないという自己責任の場でもあるのです。
証券会社に損害賠償は?とも考えたくなりますが、それもシステムの不具合などが原因で取り消しが出来なかった等の事情が無い限り難しいでしょう。
ネットトレードは夜間であっても注文が可能で非常に便利ですが、この「わずかな注意」が必要という自己責任の原則は忘れないようにしましょう