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損害の公平な分担

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医療トラブル「損害の公平な分担」について

判例は、福岡高裁の事案です。

抗生物質の外用投与を継続し、両耳の難聴を来したという事例で、医師の過失を認めました。
当該患者さんは、重篤な熱傷を負っており、緑膿菌対策として、抗生物質を使用しました。

この抗生物質の能書(製薬会社の作成する添付文書等、薬の効能を示したもの)上、「聴力等への副作用がある」と記載されていました。

それでも、当時、外用塗布での副作用の症例報告は無く、医師側は、抗生物質を注射したり経口摂取したり、全身に影響するような投与方法ではなく、外用塗布した場合にも難聴が発生するとは考えておらず、予見も出来なかったと言っています。

これに対し、裁判所は、

「医師は、薬剤の効能と副作用を十分に見極め、これを前提として可能な限り副作用が生じないよう配慮する義務がある」

とした上で、

「全身投与ではなく、外用塗布する場合であっても、長期で継続的に使用する場合は、経皮吸収による難聴などの副作用の発生を予見すべき義務がある」

と言下に断じました。

医師には「予見する義務」があり、それを怠ったというのです。

医療自体に副作用が付きもので予見が難しい中、なかなか厳しい判断ですね。

今回の病院は、大学病院で教育機関でもあるということに鑑み、医師が安易な判断をしないよう再発防止、抑止力も考えたのでしょうか。

ただし、ここで出て来るのが今回のテーマ「損害の公平な分担」という理念です。

裁判所は、厳しい判断をしながらも、

交通事故のように不法行為に起因する場合は、1000万円を超える慰謝料を認める余地があるが、全身約76%の重度熱傷を負って入院してきた患者を救おうとする治療中に生じたものであり、一方的に医師側の責任とするのは妥当でなく、損害の公平な分担の理念から慰謝料を500万円とする」
と判示しました。

この「公平な分担」という考え方は過失相殺などでもよく用いられますので、知っておくと良いですね。

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