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離婚に関する判例

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離婚の慰謝料に関係する裁判例をご紹介します。

離婚をめぐり発生する金銭のやりとりとして財産分与と慰謝料があります。財産分与とは夫婦が共同で形成した財産を分け、離婚後どちらか一方の生活が苦しくならないよう配慮するための制度です。なので離婚に際して生じる精神的苦痛を埋め合わせる目的の慰謝料とは異なります。しかし慰謝料は一定の基準で合理的に算定するのは困難であるから慰謝料と財産分与をあわせた解決金、和解金として算定することも多くあります。

裁判所はこれまで財産分与、慰謝料の額について結婚していた時期の長短、不倫行為や暴力など婚姻が破綻することになった原因とその程度(不倫行為の継続期間、同棲の有無、妻に対する生活費送金の有無、金額)、子の数、年齢、相手方の経済力などを総合的に判断しています。

慰謝料の具体的な金額で一番多いのは200万から300万円未満です。ほぼ8割以上が300万円未満で治まっており、500万円以上の判決はわずかです。以下離婚に関する判例を挙げます。

  • 3年の内縁期間を経て結婚し13年が経過。その間夫は浮気し、妻子に暴力をふるい、家から追いだしました。妻はその間二人の子供を一人で育て、事業の成功にも貢献してきました。裁判所は妻の精神的苦痛は大きく慰謝料は500万円とし、財産分与は共有財産の7割2731万円余りの高額を認定しています(松山地西条支判昭50.6.30)。
  • 結婚後2年経過したころ海外で女性と関係を持ち、帰国後妻との同居を拒み共同生活5年で別居するに至りました。裁判所は、結婚期間は短いが破綻の原因が夫の浮気、妻との生活を放棄したことにあることを重視して、慰謝料500万円の支払いを認定しました(東京高判52.2,28)
  • 結婚当初から夫の母と同居していたが、姑の嫁いびりがひどく、夫もこれに同調したため、結婚後1年半たらずで別居。裁判所は姑と夫の嫁いびりを不法行為と認定して慰謝料200万円、財産分与56万円を認定しました(名古屋地一宮支判昭53.5.26)。
  • 夫が妻の男性関係をうたがったことから婚姻半年足らずで別居し、その間第一子が生まれたが、夫は執拗に離婚を求めて妻に嫌がらせをしたため、妻も離婚を決意、離婚訴訟を起こし、慰謝料を請求。裁判所は同居期間は短いが、夫の離婚を求める対応の悪質性、不貞、別居を強いて生活費も渡さない事実を考慮し、慰謝料500万円の支払いを認めました(東京高判昭54.1.29)
  • 夫は自動車整備会社を経営し、妻は会社の経理を一部担当し、主に家事に従事。離婚に際し有責配偶者である夫に対し財産分与とは別に慰謝料を請求。裁判所は有責配偶者であることを認め、夫に相当の資産があること、妻に離婚後の収入の道がないことを考慮し、慰謝料400万円、財産分与1300万円を認定しました(東京高判57.2.16)。
  • 創価学会会員である夫がそのことを秘してキリスト教徒である妻と結婚。信仰の相違から半年余りで別居。双方から離婚と慰謝料請求がなされました。裁判所は離婚原因が、夫が結婚前に信仰の相互理解を深めることを怠ったこととし、妻への慰謝料100万円を認定しました(東京高判昭58.9.20).
  • 結婚直後妻が流産したことから、夫の実家が離婚を強く要求し、夫もこれに同調するようになりました。夫は妻に実家に帰るよう命じ、自宅の鍵も交換するなど悪質な追いだしを画策。裁判所は夫の資力状況と、財産分与の要素も取り入れて妻へ慰謝料1200万円を認定しました(大阪地判昭58.11.21)。
  • 夫は軽度の躁鬱病を隠して結婚したが飛び降り自殺を図り、社会人として再起不能となりました。これを契機として夫婦は協議離婚し、妻は慰謝料請求。裁判所は躁鬱とういう素因因子が強い病気により自殺という結果が生じていること、夫の家庭の資力、見合い結婚であることを考慮して判断、その結果短期の結婚であったが、1000万円という高額の慰謝料を認定しました(東京地判昭61.8.26)。
  • 結婚後2カ月で別居し、協議離婚をしたケース。妻は離婚の原因が夫が同居期間中性交渉を持とうとしなかったこと、共同生活に対する意欲に欠けていたこと等にあるとして慰謝料請求。裁判所は性交渉をしなかった理由を細かく検討し、夫に原因があると認定。また結婚生活への意欲が低い点も認定して慰謝料500万円を認定しました(京都地判平2.6.14)。
  • 結婚生活39年の後、専業主婦である妻が、夫に思いやり無いこと等を理由に離婚、慰謝料、財産分与を求める訴えを提起しました。裁判所は妻の過剰なまでの家庭内の努力を認め、夫の気遣いのなさ、理解のなさを破綻の原因と認定。慰謝料200万円、財産分与1694万円及び妻の死亡にいたるまで毎月16万円並びに土地建物の共有持ち分の2分の1を認定しました(横浜地相模原支判平11.7.30)。
  • 同居期間21年、別居期間9年余りの夫婦の事案。結婚生活の破綻原因をつくった夫(有責配偶者)からの2度目の離婚請求がなされました(800万円の離婚給付金を支払うことを条件)。裁判所は、離婚後、妻の生活困窮が容易に予想されることから800万円では十分ではないことなどをあげ、信義誠実の原則に照らして有責配偶者からの離婚請求は認められないとしました(福岡高判平16.8.26)。
  • 妻から夫とその不倫相手に対し、婚姻関係が破綻したことによる慰謝料請求300万円の判決が確定したあと、妻から夫、不倫相手に離婚せざるを得なくなったことに対する慰謝料請求と財産分与請求がなされました。裁判所は婚姻関係が破綻したことによる精神的苦痛に対する慰謝料請求と、離婚により妻が受ける精神的苦痛は異なるので請求の余地はあるが、本件では新たな精神的損害はないとして慰謝請求は棄却。財産分与578万円余りと、退職手当支給時950万円の支払いを命じました(広島高判平4.17)。

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