クルマとの接触事故に遭い頭を強打し脳挫傷の傷害を負いました。
その後5日間ほど意識不明でしたが、奇跡的に回復し無事退院して社会復帰が叶いました。
しかし、事故前と比べて何かやる気が起きず、記憶力も集中力も低下しているように感じ思うように仕事をすることが出来ません。会社ではもうケガは治っているのに甘えだ等と言われる事も御座います。
やはり、これは気のせいであり、自力で克服しなければいけないものなのでしょうか?
いえ、これは、高次脳機能障害の可能性が御座います。
まさに事故後に人格が変わってしまったり、記憶力集中力が無く、社会に適合した行動が出来なくなることが御座います。
これは脳の機能障害によるケースがあるのですが、MRI等を撮っても異常が見つからない事があり、見過ごされているケースも御座います。
しかし、厚労省が出している高次脳機能障害の診断基準によると、
1.事故による受傷という事実があり、
2.MRI等の検査所見により、認知障害の原因と考えられる脳の器質異常が見られるか、あるいは、診断書により確認できる場合であり、
3.先天性疾患や他の原因を除外できる場合。
とされており、事故の証拠があって、医師の診断書があり、他の疾患を除外できれば、認定可能という事になります。
何となくやる気が起きない、集中力が無い、何かイライラするといった症状で適切に診断できるのかと思われるかもしれませんが、具体的には4つの能力に関し、その喪失の程度を図り、認定に至っている様です。
4つの能力
1.意思疎通能力(記憶力や言語能力などがここに入ります)
2.問題解決能力(理解力があるか、咄嗟の判断ができるか)
3.作業負荷に対する持続力、持久力(我慢強いか)
4.社会的行動力(協調性があるか)
これがわずかに無くなっているのか全部喪失しているのかによって等級が決まります。
軽い方から、
12級12号 4能力のいずれか1つが多少失われている状態
9級7号 4能力のいずれか1つが相当程度失われている状態
ここまでは、一応通常の仕事は出来ます。
7級3号 4能力のいずれか1つあるいは2つが半分程度、相当程度失われており、
簡単な労務しかできない状態
5級1号 7級に似ているが、極めて簡単な労務しかできない状態
3級3号 生命維持に必要な身の回りのことは可能だが、就労は完全にできない状態
2級1号、1級1号
と分けられています。
如何でしょうか、高次脳機能障害と聞くと非常に難解な診断が必要と思われたかもしれませんが、実生活に基づいた極めて人間的な行動の把握を重視している事がわかりますよね。
裁判例でもこの障害を認定したケースも数多くあり、例えば5級のケース(45歳サラリーマン)でも本人に1700万円、生活にも密に係る障害ですので配偶者に200万円認定したケースが御座います。
何となくやる気が出ないだけと頑張らずに一歩を踏み出してみると道が開けることも御座いますね。