最近、物騒な事件が増えていて、若者がアルバイト感覚で犯罪に手を染めているニュースを見ます。中には途中で気づいて自首している人もいますが、自首すると刑が軽減されますよね?そんなご褒美必要ですか?安易に手を出したのだからちゃんと刑を受けるべきかと思います。如何でしょうか?
これは、刑法で定めているものですね。
ただし、途中で犯罪をやめて自首したからといっていつも減刑されるわけでは無く、一定のルールが御座います。
刑法第43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。 ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
この条文を紐解くと、
「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者」ですので、既に未遂犯は成立しております。
その上で、刑を任意で軽減してもいいよというのが前半で、但し書き以降、後半は、刑を軽減ないし免除しなければいけないと書かれています。
この「自己の意思により犯罪を中止したとき」というのがポイントで、即ち、その犯罪を中止するという意思を持ち、実際に既遂の危険を消滅させたという2つの要件が備わっている場合は、任意ではなく刑が軽減され、うまくいけば刑自体を免除されるという事です。
よって、ご質問の単に途中で犯罪をやめて自首しただけではこの要件を満たさない可能性もありますね。
こういうのを「中止犯」と言います。
少し事例を挙げましょう。
①犯人は、殺人を犯そうとナイフをもって自宅に侵入したつもりだったが、ナイフを忘れていたので現場を立ち去った。
←これは、中止の意思がなくミスですので中止犯は成立しないですね。
②犯人は、殺人を犯そうとナイフをもって自宅に侵入したが、ナイフの刃先が折れていてそのまま現場を立ち去った。
←これはどうでしょう。実はこれも中止犯は成立しません。
ナイフが機能していない時点で「既遂の危険性」がないからです。
中止犯と言えるためには、既遂に至る危険性が有り、その危険を消滅させる行為でないといけないのです。
③犯人は、殺人を犯そうとナイフを2本もって自宅に侵入したが、相手に交わされ1本目の刃先が折れた。もう1本ナイフを持っていたが何もせずそのまま立ち去った。
←これは中止犯が成立します。
殺人の危険性が十分存在している中、2本目のナイフを使わず立ち去っていますので、中止する意思をもって既遂の危険性を消滅させたと言えるからです。
2本持っている時点で用意周到であり、中止犯を認めたくない気持ちにもなりますよね。
法律の条文を紐解くと、こうやって刑の抜け道?が出来てしまうのですね。