法律の有り無しいってみましょう。
■質問
うちの子の高校の校則に「恋愛禁止」が御座います。
これは時代錯誤ですし、ブラック校則と言えませんか?
この様な校則は無効ですよね。
■回答
未だに有るのですね。
校則が契約と言えるかは置いておいて、「契約自由の原則」というものがあります。
契約の当事者は、基本自由にその内容を決める事が出来て、お互いに合意が有れば成立するという考え方ですね。
基本有効と言うのは、強行法規に違反していないか、公序良俗に違反していないか、この2点をクリアしていれば問題ないという事です。
公序良俗が曖昧ですよね。
これは民法90条に記載されています。
民法第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
短かっ!と思いますよね。
こういう各々の判断に委ねる様な規定を「一般条項」と言います。
こういう時は判例などを分析するしかないのですが、公序良俗違反の代表例としては、
・犯罪行為の約束
・犯罪ではないまでも不法行為を促しそれをしてくれたら金銭を支払うといった約束
・人の自由を不当に拘束する契約
・人の無知や困っている状況を逆手に取り不当に利益を得る契約
等が挙がっています。
そう考えると恋愛禁止は、個人の自由を著しく侵害しているとも言えますので、
無効ではないかと思いますよね。
これに関しては、有名な東京地裁の判例が御座います。
芸能事務所と所属アイドルとのトラブルですが、恋愛禁止条項があった中、それを破った事で芸能事務所がアイドルに損害賠償請求をしたというものです。
これに対し裁判所は、「アイドルが形式的には契約に違反しているように見えるが、損害賠償の義務を負うかは考慮すべき事情がある」としたうえで、「異性との合意に基づく交際を妨げられることのない自由が、幸福を追求する自由の一内容を成すものであることから、少なくとも損害賠償という制裁をもってこれを禁ずることは行き過ぎである」と判示しました。
つまり、契約自体は無効ではないものの、損害賠償請求まではやり過ぎと言っているのです。
公序良俗に反していれば無効であるところ、恋愛禁止は無効ではないので、公序良俗に反しているとは言えず有効だが、個人の幸福追求権と天秤にかけたときに損害賠償請求されるまでの謂われはないという判断ですね。
逆に、こちらも有名な判例で堀越学園の恋愛禁止裁判が御座います。
こちらは、恋愛禁止の校則違反を理由に自主退学を勧告された生徒が学校側を訴えた裁判で、判決は、生徒側の勝訴。堀越学園に98万円の賠償命令が下りました。
恋愛を理由に退学処分はやり過ぎという事ですね。
因みにこの判決でも恋愛禁止の校則自体は、学業に専念させるものとして合理的であり有効としています。
学校においても、努力目標的な位置づけでしょうか。