2年前に県立高校に特化した学習塾が出来ました。
こちらは、中学校での学校の成績が振るわない子も2年後には地元の県立トップ校に合格させる事が出来る、2年後20人必ず合格させます、と謳っていました。家から近かった事もあり、うちの子も入塾させました。
ところが、うちの子は県立トップ校には合格出来ませんでした。
まあ、これはうちの子にも責任があろうかと思いますが、公約していた20人合格には至らず10数名の合格実績だった様です。「必ず合格」と言っておきながら、それも達成出来なかったのですから授業料を返金してもらう事は出来ないのでしょうか?
なるほど、塾側も「必ず合格」は言い過ぎていましたよね。ただし、返金といった損害賠償請求が出来るかは契約の解釈によるかと思います。
平たく言えば「結果責任が問えるか?」という問題なのですが、労務の提供を伴う契約として、請負契約と委任契約が御座います。
請負契約は、請け負った人が、仕事の完成を約束し注文した側はその結果に対価を支払うという契約です。住宅のリフォーム工事などがイメージしやすいですかね。
この契約は、仕事を完成させるという義務が生じていますので、それが出来ないのであれば、債務不履行として損害賠償請求の対象となります。
一方、委任契約は、弁護士に依頼する場合が典型ですが、仕事の完成は約束されておらず、訴訟など法律行為を委ねるという契約です。訴訟には勝ち負けがありますが、負けたから責任を負うというものでは御座いません。
依頼者が要望する結果に向けて最善を尽くしたかが問われるのであり、こういう債務を「手段債務」と言います。
結果責任を負わず「最善を尽くしたか」が問われるというのは、曖昧ですよね。
受任した側が「最善を尽くした」と言ってしまえばそれまでなのかと思われたかもしれません。
しかし、例えば、病院にかかること自体は委任契約の一種で「準委任契約」と言いますが、委任契約ですので、手放しで結果責任が問えるものではないものの、患者さん側の大切な権利として認められてきたものに「自己決定権」というものが御座います。
どのような治療を受けるかは自分自身で判断するという権利ですね。
これを蔑ろにし、他に治療の選択肢があったにも関わらず説明しなかったりすると、この権利侵害が問われ損害賠償の対象になるのです。
要保護に値する大切な権利が侵害されていたら、委任契約でも損害賠償の責任を負うという事です。
今回の塾の話しに戻りますと「2年後20人必ず合格させます」というのは、当然生徒側も教えられた事を守って頑張らなければいけないものですし、必ず合格させたいという気持ちはあっても受験はそううまくいかない事も皆知っている事実と考えると、どちらかと言うとスローガン的な意味合いが強いのではないでしょうか。
その中で最善を尽くすという意味ではい準委任契約と見て受験に向け最善を尽くしたかがポイントであり、たった2年で相応の合格者を出している事から債務は履行したと言えるのかと思います。
この様に、契約(この場合入塾)したときの文言に拘泥せず、総合的且つ適切に「契約を解釈」することが重要なのだと思います。