「内心の証明」について簡単にご紹介します。
ニュースで「心は女」というタイトルの公衆浴場でのトラブルが報道されておりました。
LGBTQの問題はまだまだこれから取り決めないといけない事が多いと思いますが、男女の線引きをどうするか公衆の場では常に問題になっていくものだと思います。
外見で判断出来ればある程度シンプルだと思うのですが、「心は女」「心は男」といった内心の問題があります。
このニュースを見た時に「内心の証明」の困難さが頭に思い浮かびました。
実務では詐欺罪のときに直面します。
詐欺罪は、罰金規定が無いので有罪判決を受けると必ず懲役が科される重罪です。
詐欺罪の要件は、
1. 人を騙す意思があって
2. 相手を錯誤におとしいれ
3. 財産処分行為が成されること
この要件の中で、特に、1番の当初から相手を騙す意思があったかどうかが大きなポイントとなるのです。
これを「内心の証明」と言っております。
人の内側の心なんてどうやって証明するんだ?と投げ出したくなり、実際は、非常に困難で情況証拠から疎明(証明までいかない)に留まることが多いかと思います。
無銭飲食を例に挙げて説明される刑事さんが多いのですが、例えば、店に入り飲食をしていましたが、途中で財布を持っていなかった事を思い出し、そのまま会計をせずに店を出たというケース、これは詐欺にならないようなのです。
刑事さんから言わせると、これは刑事事件ではなく損害賠償の話し、つまり民事だという事です。
詐欺罪に抵触するのは、当初から財布を持たずにその事を認識して入店し、飲食を済ませ、そのまま会計をせずに店を出るパターンです。
これならば当初から計画が有って店を騙したと言えるそうなのです。
でも、これって本人が財布を持っていなかったとは知らなかった、後で気付いて怖くなってしまい・・・
等と言いそうですよね。
だから詐欺罪は難しいのです。
本人に自白させればいいじゃないか!と乱暴な刑事さんは言いそうですが、本人の自白のみで有罪にしてはいけないというルールが有り、しかもそれは、憲法(日本国憲法第38条)で決まっております。
検挙率も50%くらいと言われますし、仮に検挙してもそのあと検事さんが起訴する確率もさらに50%ほどと非常に立証が困難な犯罪であることが窺えます。
こんな背景もあって「騙される方も悪い」などという意見が出てきたのでしょうか。
この「内心の証明」、もう少し基準を緩くしないと詐欺が無くならないだけでなく、新たに出来る法案にも影響しそうですよね。