「養子縁組に必要な能力」についてご紹介します。
Q 私の父は、現在86歳で認知症が酷く数年前から入院をしております。
先日、戸籍を取り寄せたところ、何と半年前に私の兄の子を養子縁組していることがわかったのです。届出の筆跡は確かに父のようですが、認知症の父がした養子縁組は有効なのでしょうか?
A はい、一応有効で、認知症であるというだけで無効になるわけでは御座いません。
お父様の認知症の程度などから総合的に判断して、養子縁組の意味を理解する能力すら欠いていたと判断された場合は、そこではじめて無効となります。
この縁組の意味や効果を理解する能力のことを「意思能力」と言います。
即ち、意思能力の無い者がした養子縁組は無効となるという事です。
これは、養子縁組に関わらず民法で決まっている事です。
民法3条2
「法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは、
その行為は、無効とする。」
しかしながら、どの程度の能力があれば、その法律行為の意味や効果を理解できると言えるのか、その判断は非常に難しいです。
裁判例も様々で、例えば、
養親の知的障害度が未就学児程度であったと判断して縁組意思を否定したものや、知的障害度は中等度であるものの、養子縁組のような「日常習慣の領域」を超える事柄への判断は困難として否定したものがあります。
また、精神障害で医師が「正常な判断は困難」と鑑定したにも関わらず、それを採用せずに縁組意思ありとした事例も御座います。
これが今回お伝えしたいところです。
医師の鑑定も無視して何を基準にするの?ということころですが、当時の精神状態をみることは勿論、それだけでなく、当時の生活状況や縁組が必要な状況であったか否か、縁組が他人にわからないように進められるなど経緯に異常が無かったかがポイントとなります。
ご質問のケースでは、お父様の病状だけで判断するのではなく、本当に養子縁組が必要な状況であったのか、養子にすることが合理的か、そこに至る経緯、何故、兄妹に知らせなかったのか、そこに異常はないかを総合的に判断される事になります。