「利益相反行為」についてご紹介します。
Q 私達夫婦の子供は、まだ15歳ですが、私の父が孫の為にと言って残してくれた土地が子供名義になっています。この度、夫が事業の運転資金を借りる為、その土地を担保にしようとしていますが、子供の名義でも問題ないですよね?
将来、その会社は子供に継いでもらうつもりです。
A 利益相反行為になりますので、子の特別代理人を選任する必要があります。勝手にやってはダメです。
「利益相反行為」と言われると、会社と取締役であったり、弁護士が、争いの有る双方の代理人になれない等ビジネス的な部分を想起しがちですが、親権者と子の間でも問題になります。
親権者は、親権に服する子の財産を管理したり、一定の身分上の行為に対し子を代理して同意をする等の権限をもっています。
しかし、その行為が、子の不利益になる場合は別で、これを「利益相反行為」と言います。
この場合は、家庭裁判所の選任した「特別代理人」にその権利を行使させなければなりません。
実務上は、親権者が特別代理人の候補者を選びますので、親権者の兄弟姉妹が選出されることが多いですかね。
そして家庭裁判所が、利害関係に無い人間だと判断すれば、その人が特別代理人になります。
また、相続などで弁護士、司法書士、行政書士などに手続きを依頼している場合は、その専門家を特別代理人候補に挙げるケースも御座います。
候補者を空欄で出せば、家庭裁判所が選んでくれます。
さて、この利益相反行為になるかどうかの判断基準ですが、個々の事情などは考慮せず、その行為自体の「外形から形式的に」判断されます。ここが大きなポイントですね。
例えば、
子の財産を親権者に譲渡すること、
子を親権者の借金の連帯保証人にすること、
子が相続人である場合の遺産分割協議
などが利益相反として挙げられますが、これをする事によって将来の子供のためになるのだ!という親の考えや実際の効果は全く関係なく、形式だけで判断されるという事です。
今回のご質問も、「将来、その会社は子供に継いでもらうつもり」との事ですが、その様な事情は関係ないという事になります。
よって特別代理人を選任する必要があり、それをせずに勝手に親が事を進めると無権代理行為となりその行為は無効と判断されてしまうのです。
勿論、子が成人してから、その行為を追認すれば有効になりますが、それまでは何の効力も生じませんので、法律関係が不安定になりますよね。
親子だからといってあまり法律を意識せずに事を進めることが御座いますが、予期せぬトラブルに発展することも御座いますので注意が必要ですね。