「使用貸借の成立時期」についてご紹介します。
使用貸借とは、一言でいうと、ただで貸してあげることです。
民法593条
使用貸借は、当事者の一方が、無償で使用収益した後に返還することを約し、
相手方から「あるモノを受取る事によって」効力が発生する。
条文ではこの様に記載しておりました。
こういった「あるモノを受取る事によって」成立する契約のことを要物契約と言います。
目的物を引き渡すまでは、始まらない契約ですね。
つまり借りる側が、約束したのだから早くモノを引き渡せとは言えない契約だったのです。
引渡しまでは、未だ何も始まっていないから、その様な義務は無いという解釈です。
これには歴史的背景があります。
即ち、元々無料で貸す契約ですから、親族間などごくごく親しい間柄での契約であり、ビジネスではあまり使われなかったので、義務を課すのは妥当ではないと判断されていたというのです。
しかし、現在では普通に取引として使用貸借契約は利用されています。
そこで今般の改定では、
貸主が無償で貸すことを約し、それを借主側が、使ったあと返しますと「約することによって」効力が発生する、と変わりました。
これを諾成契約と言います。
モノの移動は関係無く口頭でも成立するという事です。
これによって借主側は早期の引き渡しを請求でき、貸主側には引渡し義務が生じます。
口頭で済みますので、よりスピーディーに事が運ぶようになったという事ですね。
ただし、1点注意しなければいけないのは、
口頭の場合には、借主がモノを受取るまでは、貸主側は、この契約を解除することができるという注意書きが新たに創設されたという事です。
条文はシンプルになりましたが、ビジネスでこの契約を利用する場合は、
やはり口頭ではなく書面を交わす方が良いですね。