「出向先でのセクハラ、どっちの責任?」について
この判例は、東京高裁の判決で原審を覆して、セクハラの事実を認め、当該セクハラ上司と出向先子会社に対し慰謝料を認定したというものです。
これは2つポイントがありまして、
先ず1つ目は、「原審を覆し」というところです。
これは、セクハラの不法行為認定の難しさを表しています。
本件のセクハラ行為は、接待の後に上司が女性社員の方を抱き寄せたり、2人きりになるのを見計らって後ろから抱き付き身体を触ったというものでした。
この様に、セクハラは人の目を盗んで行われる事も多いので、事実認定が供述のみとなることが多く信用性が否定されると認められないということも実は多いのです。
今回も控訴して初めて、セクハラ事実の存在が認められました。
ここから言えることは、証拠が無いからといって諦める必要は無いという事ですね。
そして、2つ目、「出向先」に慰謝料を認めたというところです。
これもよく問題になり、出向先は子会社なわけで指揮監督や所属は、親会社である出向元にあるとして使用者責任を逃れようとするケースが御座います。
今回もそこが問題になりました。
使用者責任は、法的呼称に拘ると出向元にあるのですが、本判決では、実質上の指揮監督権にまで踏み込んで認定を行っています。
現に、出向先で起きているセクハラ事件ですので、言い逃れするな!
出向元は指揮監督出来ないだろ!個別具体的に判断するぞといったところでしょうか。
実際、セクハラが起きている現場では、こういった言い逃れは有りますので、参考になる判例でしたね。