「思想信条を理由とした格差」についてご紹介します。
所謂「東電訴訟」と言われる有名な判例ですが従業員の10名が、共産党員またはその支持者となったことを機に、「共産党員は信用が無い」等として、他の同期従業員と比べて、昇格や給与について著しく不利益な取り扱いを行いました。
これに対し10名の従業員は、均等な待遇だけでなく名誉も侵害されたとして、慰謝料300万円ずつに加え弁護士費用50万円と謝罪広告を求める民事訴訟を提起しました。
これは、明らかに裁量権の濫用だとわかりますね。
会社には裁量権があるとはいえ、限度が御座います。
ポイントは3つ
■ 事業目的の達成に必要
■ 公序に違反しない
■ 名誉を違法に侵害しない
本ケースでは、このどれにも違反しているので、従業員各150万円の慰謝料が認められました。
それともう一つ特徴的な事があります。
当該10名の従業員は、慰謝料以外に、本来あるべき給与との差額の損害賠償も求めていました。
損害賠償を求める時の立証責任は、本来求める側にあります。
これを挙証責任と言うのですが、この「本来あるべき給与」を他の同期従業員と比べていくらだと算出するのは非常に困難ですよね。年功序列以外にも人事考課には様々な要素が御座います。
しかし、本判決では、会社の悪質性を考慮し、この立証責任を会社側に転換させました。
すなわち、この10名の従業員が、他の従業員と比べて職務遂行能力が劣っているということを「会社側が立証しなさい」という判断をしたのです。
当然、職務能力の差で悪い評価をつけていたのではないので出来るわけもなく、差額給与も損害として認められたのでした。
最近は、コロナ禍で予期せず様々な差別や偏向を押し付けられることもあるようですが、職場の裁量権という点では、上記3点がポイントだということは、改めて認識しておく必要がありそうですね。