「脅迫罪の具体的事情の壁」についてご紹介します。
よく、これって脅迫罪に該当しますか?といったご相談があります。
誰かに脅されたりして、警察に脅迫罪で被害届を出そうとしても、
門前払いをされるという事が実務上御座います。
「脅迫」というのは大きいモノから小さいモノまで結構幅広く存在するのですが、刑法222条の脅迫罪は、狭義の脅迫と言われ、害悪が向けられる対象や害悪の種類が限定されています。
これだけ聞いてもよく分からないのですが、脅迫罪では、人に害を与えるという「害悪の告知」があることが大前提です。
そして、その害悪は、人を不安にさせたり不愉快にさせたり、気持ち悪がらせたりするだけでは足りず、人に畏怖の念を抱かせなければいけないとされています。
さらに、その結果、個人の平穏な意思決定や行動の自由を阻害するような事実があれば、脅迫罪が成立します。
「人を怖がらせて自由な意思決定をできない状態」にすれば脅迫罪が成立するということです。
ここまで文章に書くと、意外とわかりやすいですよね。
では、何故、脅迫罪の被害届が受理されなかったり、門前払いを受けたりするのでしょうか。
それが、「具体的事情」の壁です。
たとえば、「おれが祈ったらお前呪われるよ」と言われても、あまり真に受ける人はいないですよね。
ただし、これが、脅迫罪に該当したという判例が御座います。
何故、脅迫になったのか?
それは、加害者が祈祷師で被害者が14歳くらいだったからです。
もう一つ、別の件で「おれは刑務所に入っていたんだぞ」と脅した事例
これも聞く人によっては、畏怖の念を抱く可能性がありますよね。
しかし、このケースの相手方は柔道初段の元警官だったため、脅迫罪は成立しませんでした。
つまり、害悪が向けられた先によっては脅迫罪が成立したりしなかったりするということですね。
ここが難しいところなのですが、相手方との関係やそこに至る経緯、背景、その場の雰囲気など具体的な事情を考慮して決まるらしいので、警察に申告する際は、このあたりを感情的にならず、「一般人の視点」で説明できれば、ぐっと受理されやすくなるかと思います。
脅迫罪は、厳格な線引きがあるわけではなく、行為者と相手方との相対的な関係で決まるのですね。
「脅された」と思った時は、このあたりのポイントを知っていると良いですね。
法律って、いろいろな壁があるのですが、ポイントを知っているのと知らないのでは大きな違いがありますので、今後も皆さまが疑問に思いそうな「法律の壁」についてご紹介していきます。