医療トラブルで「死に直面した慰謝料」について紹介したいと思います。
判例は、千葉地裁の事案です。
タイトルだけ見ると、何のこっちゃと思われるかもしれませんね。
当該患者は、高圧酸素治療を実施中でした。その際、担当看護師が、輸液瓶の残量や流量を確認しなかった為、点滴回路から空気が患者の静脈に流入するという事故が起きました。
これにより、患者は、中枢神経の障害を来し、大脳の機能障害を起こしてしまいました。
これに対し、裁判所は、後遺障害慰謝料として1500万円を認定しました。
ここまでは医療過誤の損害賠償として普通に考えられる事ですね。
ここからが、今日のポイントですが、患者は、本件事故により、約6時間意識を喪失し、その間、生死をさまよい、その後意識が回復するまでに約18時間を要しました。
ご両親も駆けつけていたのですが、正に死に直面していた時間、何にも代え難い精神的苦痛を受けたことと思います。
被害者の患者本人もそうですが、ご両親も、家族の死を考え、その事に向き合わなければいけない時間を強いられたのです。
裁判所は、その「死に直面した」事の精神的苦痛を慰謝料として認めました。
金額は、患者本人に200万、ご両親に各100万円です。
金額はこの程度ですが、別途、後遺障害の慰謝料も認めていますので、全体として妥当な金額だと解釈されています。
よく弁護士さんが、実被害が無いと慰謝料は難しいというお話しをされますが、医療現場での過失で患者が「死にかけた」という事、その事実と直面した事に対し慰謝料を認めたという点で、是非覚えておきたい判例ですね。