交通事故の事例で、治療を要する様な目に見える傷害は無いにも関わらず、独り身で、将来、介護が必要になる事は明白だとして慰謝料を認めた事例をご紹介しました。
これが認められるのなら、言った者勝ち!みたいに思われた方もいらっしゃると思いますし、実際主張しなければ何も始まらないといったところも御座います。
しかし、今回の判例では、その「言った者勝ち」の主張が認められませんでした。
その主張とは・・・
「交通事故のせいで試験に落ちたじゃないか!」
というものです。
被害者は、信号機の有る交差点で、横断歩道を歩行していたところ、左折してきた加害自動車に轢かれる事故に遭いました。
頸椎捻挫、右坐骨骨折、頭部・両大腿・右膝・右足関節打撲の傷害を負い、入院82日、通院80日を要しました。
この事故に遭ったのが9月で、被害者は当時、大学院入試を翌2月に控えていました。
本来であれば万全の準備をして試験を迎えるところ、この半年間をほぼ入通院生活に費やした為、準備不足で不合格になってしまったとの事で、慰謝料の算定に考慮するよう請求しました。
本当に半年間ほぼ入通院をしていたのですから、事故との関連も一部有りそうでは有りますが、この請求は認められなかったわけです。
裁判所の判断は、
「例え、本件事故と入試不合格に因果関係があるとしても、それは、加害者には予見不可能な事であり、相当因果関係のある損害とは言えない。」として、
慰謝料の算定に考慮する事を否定しました。
ポイントは「予見不可能」という点でしたね。
確かに被害者が受験生であった事は、外見からわかりませんし、そんな事、後から言われても・・・といった点は否めませんね。
目に見える損害以外で何かを主張するには、誰から見ても予見可能かどうかというポイントを一考すると良いですね。