交通事故で人身事故と言えば、治療費が発生します。
ある程度、治療期間を過ぎると症状固定と言いまして、これ以上良くも悪くもならないという判断が医師から下されます。
むち打ちで3ケ月くらい等と言われていますね。
この期間を過ぎると保険会社も治療費を打ち切り、治療するなら自費になりますが、この時点で将来に亘る障害が残る場合は、後遺障害として認定され、後遺障害慰謝料というものが、これまでの治療期間の慰謝料とは別に算定され、等級に応じた後遺障害慰謝料が支払われます。
ここまでは特に問題無く、よくある話だと思いますが、
今回ご紹介の判例(東京地判平11・1・12)は、慰謝料620万円と、
それ以外に、将来の抜釘手術に伴う損害として404万5360円を請求したというものです。
未だやってもいない手術代を計算し、請求したという事ですね。
この手術は、将来施行される可能性が高いという主張でしたが、これまでの判例をみても、将来の損害を「独立の損害項目」として認めた判例は見つからず、この部分の請求は棄却で終わる事が殆どでした。
ところが、今回の判例では、
「将来、抜釘する可能性があり、手術に伴う危険や各種の損害が発生するとの不安感を有する状態にある」として、慰謝料の算定に考慮する必要があると判示したのです。
将来不安だから、慰謝料として算定するという判断ですね。
結果、慰謝料として700万円が容認されました。
内訳は、傷害慰謝料(元々の入通院につき)300万円、後遺障害慰謝料270万円、将来の手術への不安130万円
となっています。
将来のやるかやらないか分からない手術に伴う損害が、算定する事が困難もしくは不可能でも、慰謝料として斟酌される事があるというのは、是非覚えておきたいですね。