民事訴訟において、過去のプライバシーに係る新聞記事を書証として提出した行為が直ちに不法行為とは言えないとされた事例があります。
事例:Xは、個人タクシーに乗車する際、運転手のドア操作上の過失により負傷したとして、損害賠償請求訴訟を提起しました。
すると、個人タクシー側についた弁護士がXの過去の犯罪歴(養父殺害容疑での逮捕)を報道した新聞記事の写しを書証として裁判所に提出しました。
当然、Xは、その書証提出によりプライバシーを侵害されたとして不法行為に基づく損害賠償請求を提起したのです。
今回の事件と全く関係の無い情報ですし、意図せず人に知られたくない情報を晒されたわけですから、当然の訴えですよね。
ところが、裁判所の判断:請求を棄却。
当該弁護士にとって、Xの陳述には疑義があったようで、信用に足る人間なのかを示す為に陳述書の信用弾劾という趣旨もあって提出したとの事でした。
裁判所は、今回の弁護士の行為に対し「遺憾な側面がないわけではない」としながらも、プライバシー暴露に係る書証については、攻撃防御の側面から必要性について十分検討するべきであると付言していました。
何か腑に落ちない判決ですが、人の信用性を確認する手段として過去の犯罪歴を露呈しても不法行為とは言えない事もあるのですね。
特に裁判は、双方当事者からプライバシーの暴露が成されることをある程度覚悟して臨むべき場と言えますね。