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FAX文書

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事例:Xは、テレビ番組のコーナーにレギュラー出演するジャーナリストですが、視聴者の投稿をきっかけに、ある新興宗教法人Yの実態を番組で取り上げる事としました。そして、Yに取材を要求するのですが、拒否され、全く相手にされませんでした。その後も執拗に質問状等を送付すると、Yは、番組宛てに「警告書」と題するFAX文書を送付したのです。

その内容は「Xは恐喝の疑いで警察の内偵中である」「暴力団と親密な関係がある」「オウム真理教の元信者とトラブルを起こしている」「何かと評判のよろしくない人物である」等と個人の名誉感情を侵害する事実が記載されていました。

これに対し、Xは、名誉毀損に基づく慰謝料200万円と弁護士費用を求めて裁判を起こしたのです。

裁判所の判断:裁判所は、Yに慰謝料30万円の支払いを命じました。

いつもの通り、名誉毀損の慰謝料は金額が低いと感じますが、
今回Yは、テレビ局じゅうにこの文書をばら撒いた訳ではなく、
番組宛てにFAXをしており、「公然性が無く、名誉毀損に該当しない」と主張したところ、それが否定されたのが、ポイントです。

テレビ局などの大きな組織の職場にファックス文書を送付したときは、たとえ
●●番組宛てと記載されていても、不特定多数の認識する状態におかれる為、封書による送付と異なり、秘密性は期待できないとして問題視したのです。

また、仮に今回封書だったとしても、本件書面は、個人宛ての「私信」ではなく、組織の業務にも関与することは明らかで、受信した人がこれを他言しないことは期待できず、Yの主張は採用できないとした点もポイントとなりました。

今でも手書きした文書をFAXで送る方もいらっしゃると思いますが、
FAXに秘密性はありませんので、特に大きな組織に送る時は、
様々な問題を孕んでいるという点に注意しましょう。

因みに、名誉毀損は「事実の有無に関わらず」問題になりますので、
そこも注意が必要ですね。

今回の件でも、事実かどうかは問題視されていません。

「事実なのだから広めてもいいではないか」という主張は通用しないのです。

余談ですが、FAXが発明されたのは、1840年代、イギリスの発明家によるものです。日本では江戸時代の終わりの頃ですかね。

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