情報が無いというのは怖いですね。法律も同じ。法リテラシーを磨いて、万一に備えましょう。
さて、前回、工場の騒音などは、規制があるというお話しをしました。
今日は、騒音の最後、もっと身近な「生活騒音と慰謝料」について紹介します。
このようなご相談は良く聞きます。
「マンション上階の子供の足音や深夜に洗濯機を回す音など、本当にうるさくて、耐えられないのですが、何か家庭の騒音を規制する法律などはないのでしょうか?」
そうですよね。
これは、有って欲しいのですが、直接、生活音を規制する法律は無いのです。
生活騒音は、その音が小さい、継続しない、発生する音の内容も様々ですので、一律に規制する事に不向きなのです。
地方自治体によっては、条例で規制している事はあります。
条例は有っても、「生活音だから我慢しなさい!」「子供だから仕方ないでしょ!」等と一蹴されそうで、なかなか厳しそうですよね。
ところが、有りましたよ。判例が!
子供(当時3歳から4歳)の廊下を走ったり飛んだりして生じた音に対し、
30万円の慰謝料が認められた判例です。(平成19・10・3東京地判)
この事例は、マンションでの所謂「足音がうるさい」といった騒音で、3LDKのファミリー向け、つまり子供が居住する事が予定されているマンションでの事例です。
この事例は、1年半位、ほぼ毎日、時には深夜帯にも長時間連続して起きていた騒音です。
裁判所がどう考えたかというと、、
「本件音が、特に夜間及び深夜には原告住戸に及ばないように被告の長男をしつけるなど「住まい方」を工夫し、誠意の有る対応を行うのが当然であり、・・・その様な工夫や対応を採ることに対する期待は切実なものであったと理解することができる。」
と生活騒音について、まず理解を示していますね。
そして続けて、、、
「そうであるにも関わらず、被告は、床にマットを敷いたものの、その効果は明らかでなく、それ以外にどの様な対策を採ったのかも明らかでなく、原告に対しては「これ以上静かにする事はできない。文句が有るなら、建物に言ってくれ。」と乱暴な口調で突っぱねたり・・・・その対応は極めて不誠実なものであったということができ、そのため、原告は、やむなく訴訟等に備えて騒音計を購入して本件音を測定するほかなくなり、精神的にも食欲不振、不眠等の症状が生じたものである。」
となり、そして結論、
「以上の諸点、特に被告の「住まい方」や「対応の不誠実さ」を考慮すると、本件音は、一般社会生活上、原告が受忍すべき限度を超えるものであったと言うべきであり、原告の苦痛を慰謝すべき慰謝料としては、30万円が相当であるというべきである。」
と判示しています。
またまた「受忍限度」が出てきましたね。
静かな生活環境が守られることは、精神的にも肉体的にも重要なのは、言うまでもないという事でしょうね。