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不倫の慰謝料に関する判例

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不倫浮気で家庭の破壊に至った裁判例をご紹介します。

愛した人に夫又は妻がいたら?いくら真剣でも時として夫又は妻に対して慰謝料をしはらわなくてはいけなくなることがあります。判例も「夫婦とその未成熟の子からなる家族にあって、各人は他の家族をともに平穏に幸福な家庭生活を営むべき法の保護に値する利益を有し、第三者がこれを違法に侵害するときは不法行為が成立するものと解すべきである」(最判54・3・30)としています。日本の法律は「平穏・幸福な家庭生活」、「夫又は妻の精神的平和」を保護する立場にあるのです。

慰謝料の額は昭和40年代までは100万円未満でしたが、昭和50年代以降になると300万円、500万円と高額な金額が認められるケースも出てきています。その一方で「平穏・幸福な家庭生活」を守るのですから夫婦の婚姻関係がその時既に破綻していた時は、特段の事情のないかぎり第三者は相手にたいして責任を負わないものとされています。

また慰謝料請求も一定の期間内にしないと請求できなくなります(消滅時効)。この消滅時効がいつから進行するかという問題もあります。夫婦の一方の配偶者と第三者の関係を知ったときから進行するというのが判例(最判平6・1・20)であり、それから3年で消滅時効が完成します。離婚の苦痛を理由とする慰謝料請求の場合、離婚成立時から時効が進行することになります。以下家庭崩壊に関する判例を挙げます。

  • 相手に夫がいることを知りながら情交を結んだ男性のケース。裁判所は被告男性に40万円の慰謝料支払いを命じています(最判昭34・11・26)。
  • 被告女性は男性に妻がいて円満な婚姻生活を営んでいることをしりながら、情交し、子まで出産しました。原告妻は夫、被告女性、その養父に対し,離婚ならびに不貞とそれをしりつつ認容したことを理由に慰謝料請求。裁判所は離婚の他、3名に対し、慰謝料100万円、弁護士費用10万円、夫に対し財産分与3年間月額2万円(月給手取り額の約3分の1)の支払いを命じています(横浜地川崎支判昭43.7.22)
  • 被告女性は男性に妻子があることを知りながら情交し、その上同棲して、実質上家庭を破壊しました。裁判所は被告女性に対して男性の妻(原告)とその子(三人)に対して慰謝料(妻200万円、子それぞれ30万円)の支払いを命じています(東京地判44・2・3) 相手女性は作家として相当の将来性を有していたことから、当時としては高額の慰謝料請求権が認定されたと考えられます。
  • 被告女性は相手に妻がいるにもかかわらず、原告の夫と2年間の情交関係を続けていました。この間の情交関係は原告の夫のほうが積極的であったため、原告の被告女性にたいする慰謝料請求は棄却されました(鳥取地判昭44・3・31)
  • 被告男性は原告の妻と情交関係を持ち、一時同棲までしました。原告は被告に対し、関係を断つよう誓約させ、中止したが、男性は関係を再開し、夫の勤務先に不倫を知らせるという非常識極まりない行為に出ました。裁判所は被告に対して500万円という高額な慰謝料を支払うよう命じました(浦和地判昭60.12・25)
  • 原告女性は、夫が被告女性と情交関係をもったため夫との離婚を余議なくされてしまいました。そこで原告女性は相手女性に対して慰謝料300万円を請求しました。元夫は離婚に際し元妻の女性に慰謝料500万円及び財産分与400万円を支払っていました。裁判所は慰謝料の額は300万円が相当であるが、夫が支払った慰謝料により原告の精神的損害が全額補填されているとして、請求を棄却しています(横浜地判平3・9・25)元夫と被告女性の共同不法行為と構成。
  • 原告女性は夫が被告女性と肉体関係を持ち、同棲するに至ったため、被告女性に対して慰謝料請求。夫婦は夫が被告女性と肉体関係を持った当時すでに性格の不一致、金銭感覚の相違によりその関係は悪化しており、破綻状態にありました。そこで裁判所は原告女性の慰謝料請求を棄却しました(最判平8・3・26)。
  • 原告女性は夫と昭和36年に婚姻したが、夫は被告女性と昭和54年から同棲するに至り、原告と夫は平成10年3月に離婚が確定した。そこで原告女性は被告に損害賠償請求しましたが、被告は時効を主張して争いました。裁判所は第三者の不法行為によって離婚をやむなくされ、精神的損害を被ったことを理由として賠償を求める場合、離婚が成立したときに初めて第三者の行為が不法行為だと知り、かつ、損害の発生を完全に知ったことになるとして、消滅時効の帰算点は離婚の判決が確定したときと判断。慰謝料200万円と弁護士費用20万円の支払いを命じました(東京高判10.12.21)。
  • 原告女性は夫と被告女性が不倫関係にあったこと理由に慰謝料の請求とともに、原告と夫との婚姻が継続している間、夫との同棲、または会ってはならないとする差し止め請求をしました。原告、夫、被告はいずれも同じ公立学校の教師であって、不貞行為の期間は20年と長期にわたるものでした。裁判所は300万円の慰謝料の支払いを認めましたが、差し止め請求は棄却しました(大阪地判平11.3.31)。夫と会うこと自体が違法になるとは到底考えられないという理由。

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