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告訴権者

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刑事訴訟法では、告訴をする権利を与えられているものを「告訴権者」といっています。

告訴権者は、原則として被害者本人になります。ですが、何らかの理由によって被害者が告訴権を行使できない時は、法定代理人等の被害者以外の者にも告訴権が与えられています。

被害者

ここにいう被害者とは、犯罪によって直接被害を被ったもので、その犯罪によって間接的に何らかの不利益を被ったに過ぎないものは、被害者でないのです。例えば、妻が名誉を毀損された場合、被害者は妻本人であって、その夫は名誉毀損罪の被害者ではないのです。

そして、被害者の告訴権は、告訴当時にあれば足り、被害者が告訴の後に告訴権者の資格を失っても告訴の能力には何ら影響がないのです。例えば、器物損壊罪の被害者が告訴後に被害品の所有権を失っても、先になされた告訴は、依然として有効です。同じく親族の犯罪の「犯罪の特例が適用される犯罪」については、告訴の後に被害者と犯人との親族関係が消滅したとしても、告訴の効力は有効に続きます。

ちなみに、被害者は、自然人に限られていません。公私の法人はもとより、国又は地方公共団体も被害者に含まれ、さらに、法人格を有しない社団法人・財団法人も被害者として告訴権を有しています。

被害者の法定代理人

法定代理人
ここに言う法定代理人とは、未成年者の親権者すなわち父母及び未成年者後見人・成年後見人になります。被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができるので、告訴の時点で、法定代理人の地位にあるかどうかを、戸籍謄本、家庭裁判所の審判謄本等によって証明する必要があるのです。(未成年の外国人が被害者の場合、その法定代理人が誰であるかは親子間の法律関係によることになっていますので、注意する必要があります。)。

未成年者であっても、法律上の婚姻をした場合には、成年に達したものと看做されることから、母の親権は、その子の婚姻と同時に消滅します。したがって、婚姻している20歳未満の子が被害を受けた場合には、父母は、既に親権を失っている以上、法定代理人として告訴をすることができなくなる。また、未成年者を養子にすると、その養子は縁組の日から養親の嫡出子という地位を取得して養親の親権に服する事になります。その反対に、実親は、その未成年の実子に対する親権を自動的に失い、法定代理人の地位から脱することになっています。そのため、未成年の養子が被害を受けた場合には、両親がこの未成年の養子の法定代理人として告訴権を有することになります。

法定代理人の告訴権
法定代理人は、独立して告訴をすることができます。独立してと言うのは、被害者本人の明示黙示の意思に拘束されないと言うことを意味しています。この法定代理人の告訴権の本質に関しては、2つの説があります。(独立行使代理権説と固有権説)

固有権説は、法定代理人の告訴権というのは年少者や無能力者の保護を図るためであり、特に法によって受権されたもの。だから、法定代理人は被害者本人の意思にかかわらず、実行に固有の告訴権を行使することができるとしています。固有権説に寄れば、法定代理人は、被害者本人に告訴の意思があるかどうかに関係なく、告訴を行使することができるし、また、被害者本人の告訴権が何らかの理由で消滅していても告訴することができるのです。

このような理由から、学説の多数が独立行使代理権説を支持しているなかでも、判例は固有権説を採用しているようです。

死亡被害者の配偶者・親族等の告訴権
被害者が告訴をしないで死亡した場合には、死亡被害者の配偶者と直径親族・兄弟姉妹は、死亡被害者の明示した意思に反しない限りにおいて、告訴をすることができます。

死亡被害者とその配偶者・直系親族・兄弟姉妹との間の身分関係は、被害者の死亡当時に存在していれば良くて、その後の身分の変動は、配偶者たちが行った告訴の効力にはなんら影響を与えないのです。配偶者の場合には、被害者の死亡後に旧姓に戻していても、再婚していても告訴することができます。その際の親族の範囲は、民法によって定まっています。配偶者・直系親族・兄弟姉妹が、被害者が生前に明示した意思に反して、自己の告訴権を行使することができます(この明示した意思の内容と言うのは、告訴をしないと言う事)。被害者が自己の意思を明示する方法や相手方について何ら制限がなく、明示の相手方は誰でもよくて、日記のように相手方がない場合なっても良いとされています。なので、被害者が死亡する前に告訴の意思を有していたかどうかについては、関係者の話や、遺言、日記等について明らかにすることが必要となるようです。明示の意思に反してなされた告訴は無効であるとなっていますが、明示の意思に反していたか証明されない限り有効な告訴とも考えられています。

被害者の法定代理人が被疑者である場合の告訴権
被害者の法定代理人は、独立して告訴権を行使することができますが、被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者・被疑者の4親等内の血族であるとき・被疑者の3親等内の姻族であるときは、法定代理人が被疑者の利益のために適正に告訴権を行使することは一般的に見て期待しがたいので、このような特殊な事情がある場合には被害者の親族は独立して告訴することができるのです。

死者の名誉が棄損された場合における告訴権者
死者の名誉を棄損については罪については、死者の親族又は子孫は告訴をすることができます。また、名誉毀損罪について被害者が告訴をしないで死亡した時も被害者の親族又は子孫は、被害者の明示した意思に反しない限り告訴をすることができます。刑事訴訟法第230条1項の(名誉を毀損した罪)というのは、刑法第230条2項の死者名誉毀損罪をいい、刑法第231条の侮辱罪は含まれません。なお、侮辱された被害者が死亡した場合には、刑事訴訟法に規定される配偶者・直系の親族又は兄弟姉妹が告訴権者となります。

ここにいう子孫とは、親等数にかかわらず、血族である直系親族の全てです。

告訴権者の指定
親告罪では、告訴が訴訟条件とされているので、告訴権者が存在しない場合には、その罪を訴追することができません。そこで、告訴権者が全く存在しない場合のほか、たとえ告訴権者が存在していても、その全てが告訴能力を欠いている場合などには、検察官が利害関係人の申し立てにより告訴権者を指定することができます。利害関係人からの申し立てを受理し、告訴権者の指定を行う検察官は、法律上はどこの検察庁の検察官でも良いとされてますが、実際には、親告罪の事件を管轄する裁判所に対応する検察庁の検察官が行っているようです。利害関係人は、告訴をすることについて事実上の利害関係を有するものであれば良く、友人・恋人・告訴権のない親族・内縁の夫・雇い主・債権者・破産管財人など、告訴をすることについて利害が認められる限り、すべて利害関係人に含まれます。利害関係人の申し立てに基づき告訴権者を指定するかどうか、誰を指定するかについては、検察官の裁量に委ねられています。

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